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『ルシファー・エフェクト』 [☆☆]

・軍隊やいくつかの裁判所では新入りの髪を剃るが、この帽子はその代わりだ。髪形を覆い隠すと個性が損なわれ、囚人間の匿名性が高まるという効果もある。

・一般に、自分自身で弁護を担当しようとすると感情的になりすぎるきらいがある。昔からのことわざにあるでしょう。「自らの弁護を試みる人間は、愚か者を弁護士にするに等しい」と。

・自分から弱音を吐いて男らしさに傷がつく、という結果を受け入れがたいのだろう。そこで面目を保つべく、私たち(とりわけ私)から、帰りなさいと強く命令されるのを待っているのだ。

・他の仲間から「悪い囚人」のレッテルを貼られたままでは帰れないというのだ。自分が監房を散らかしたせいで、みんなに迷惑をかけてしまった、と。自分が悪者でないと証明するためなら、監獄へ戻ってもかまわないと思っている。

・自分の心の中にまともな支えがないので他人に追従します。悪いことすら真似るのです。

・歴史上には、同様の例があふれている。宗教的な迫害を逃れた者の多くが、新たな環境を築いて安全を確保したとたん、他の宗教を信じる人々に冷酷な仕打ちをし始める。

・人は、演じている役柄どおりの人間になる。

・今後変えられる見込みもない世界にさらされて、怯え、混乱し、狼狽している。だからこそ、心が語りかけてくる声に耳をふさぎたくて、ああやって馬鹿騒ぎをする。自分自身や周囲の者たちに、怖くなんてないんだと納得させるため、笑い声を立てる。

・退屈さをはじめ、刑務所暮らしのいくつかの特徴を悪用すれば、人間の感覚を狂わすことができる、と。たとえば、個性を奪い、つまらない作業をやらせ、態度が悪い者が一人いれば全員に罰を与え、トレーニングの際は細かな注文を出して、完璧であっても難癖をつける。

・囚人たちが法的な助言を求めなかった理由は、こんなふうにも解釈できるでしょう。中流階級の白人米国人だけに、犯罪がらみの世界へ押し込まれる心の準備ができていなかった。

・大多数の人にとっては、強大なシステムや状況のパワーに個人の力で抵抗できるというのは過信であり、自分は絶対無敵だという気休めの幻想と大差ない。そんな幻想を持ち続けていると、かえって周囲に操られかねない。好ましくない影響を受けているのではないかと警戒することを怠ってしまうからだ。

・必要な場面で適切な監視、監督を行なわなかった点で、怠慢の悪=傍観という罪悪を犯してしまったのだ。

・本物の刑務所で会った囚人の中には、立派な尊厳を持つ人もいました。そういう人は、看守をけなすどころか、いつも敬意を払い、看守の心にサディスティックな衝動を芽生えさせず、囚人という恥を超越できていました。

・自らの意思に反する状況はすべて、その人物にとって監獄である。

・皮肉なことに、自分が絶対状況の力に屈するはずがないという誤った信念を抱くことで、状況の力に対する警戒心は不十分となり、実際にはかえって罠にはまりやすくなってしまうのだ。

・ボスニア、コソボ、ルワンダ、ブルンジ、あるいはスーダンのダルフールで起こった大量殺戮や残虐事件も、国家の安全や征服の野望といった曖昧なイデオロギーに人間性や思いやりが敗北した明確な証拠であり、人々が社会の力に屈した例といえる。

・状況の力が最も顕著になるのは、まったく新しい環境下にあるときだ。そうした環境におかれた人々は、不慣れな中でどう振る舞うべきなのか、過去の行動指針に頼ることができない。

・自分にしろ他人にしろ、不可解で異様な行動を取ったときの原因を突き止めたいなら、状況の分析から始めるのが正しい。それでも謎が解明できない場合のみ、個人の気質の分析(遺伝子、個性、病的な逸脱など)へ移るべきだ。

・ユダヤ人の抹殺を「最終的な解決(エントローズング)」と銘打つことで、彼らの心理には二重の効果が生まれた。まず、中身は大量殺人でありながら、そう聞こえない、感じられない表現に包み隠した。そして、おもに問題の解決という部分に焦点を当てるようになった。

・人間的な関係は「我―汝」と表せるのに対し、非人間的な関係は「我─それ」と表わせる。

・あらゆる情熱の中でも、「内輪」に入りたいという情熱ほど、まだ大きな悪に染まっていない人間に巧みに大きな悪事を働かせるものはない。

・事件を振り返って、自分ならそんなことはしないと言う人もいるでしょう。でも、あの時のあの状況にいるわけでもないのに、自分が何をするかがどうしてわかるのでしょうか。わかるはずがありません。

・「人はなぜ自殺するのか」という論文で「人々が死を望むのは、ふたつの根本的な欲求が満たされないまま消えてしまうときだ」と述べている。その一つ目は、他人と仲間になりたい、あるいはつながりたいという欲求。ふたつ目は、他人に尊重されていると実感したい、あるいは誰かや何かに影響を与えたいという欲求だ。

・ウィリアム・ゴールディングの小説『蠅の王』は、イギリスの善良な少年聖歌隊員の一行が、顔をペイントするだけで殺人もいとわない小さな獣に変貌してしまうという物語だ。

・助けてほしい? だったらそう頼めばいい。冷淡とされるニューヨーク市民が相手だろうと、他の大都市の市民だろうと、直接頼めば助けてもらえる可能性は高まるはずだ。

・驚くべきは、このおぞましいスライド画像の多くに、被害者とともに加害者自身の姿が写っていたことだ。いまわしい所業に及ぶことと、いつまでも残る写真としてそれを記録することはまったく別だ。

・社会─情緒的リーダーは、自分の組織に属する人たちのニーズに敏感で、集団に帰属することのプラス面を伸ばす活動に取り組む。他方、課題遂行型リーダは、リーダーシップのもっと公的な側面、つまり、課題や基準の設定、職務の割り振り、集団の目標を達成するための情報のフィードバックといったことに焦点を合わせる。

・スタンフォードでもアブグレイブでも影響力を持ったのが、退屈さだった。長時間の夜間シフトから生じた退屈さは、興奮や刺激を求める強い誘因となった。結果として、どちらの看守集団も、楽しめそうだと思ったことを自ら「起こす」と決めた。

・虐待行動が起こる理由を説明する社会心理学の概念として、以下のようなものを挙げている。没個性化、非人間化、敵対的先入観、集団思考、道徳的束縛からの解放、社会的促進(集団で同種の作業を行なうと、他者の存在が刺激となり、単独で行なうときより作業量が増大する現象)。

・イラクの大量破壊兵器問題に関与した組織のメンバーには、集団思考のいくつかの側面がはっきりと見られた。すなわち、代替案をほとんど検討しない、情報を選択的に収集する、集団内で同調圧力あるいは批判を自制する力が働いている、集団的正当化が起こる、といったことだ。

・アブグレイブの夜間シフトの看守たちは、その多くがにやけた顔で写っている。その表情は、彼らが目立ちたがり屋であることを示している。目立ちたがり屋は、これらの馬鹿げた行為を見て楽しむ、熱心な覗き見客を期待している。一方、彼らには、画像がいったん拡散すればもはや管理できなくなることが理解できず、結果として、当局に現行犯逮捕されてしまった。

・拷問や尋問の専門家のほとんどは、屈辱的かつ名誉を傷つけることを狙ったこうした身体的虐待が、信用できる情報をもたらすことはめったにないという点で一致している。

・自白や告白は、脅しによってではなく親密な関係の構築によって、憎しみの醸成ではなく信頼の獲得によって得られるのだ。

・司令部の誰一人として、虐待について知りませんでした。なぜなら、司令部の誰一人として、虐待に気づくほど注意を払っていなかったからです。それこそが真の問題でした。

・これは陰謀ではありません──単なる怠慢、それだけです。

・囚人は犬のように扱わなくてはいけない。もしも……囚人が自分たちは犬とは違うと思っていたら、のっけから尋問の支配権を失ったに等しい。

・アメリカでは毎年12パーセントもの国民が詐欺犯に騙され、ときには生涯の蓄えを失う。この数字は、アメリカ以外の国でも共通すると思われる。

・肝心なのは、騙された人たちは自分とは違うと考え、彼らには負の気質(愚かさや無知)があるなどと決めつけないことだ。そうではなく、自分と変わらない人々がなぜ、どのようにして、すっかり騙されてしまうのかを理解しなくてはならない。

・現在のその行為が、いつか裁かれるかもしれないことを常に想像してほしい。その時になって、「ただ命令に従っただけ」とか「他のみんなもしていた」と弁明しても、誰も聞き入れてくれないと心得よう。

・損失の可能性がありと枠づけものは嫌い、利益として提示されたものを好む。XがYに負ける40パーセントの可能性は受け入れないが、YがXに勝つ60パーセントの可能性なら受け入れる。

・ある意味で英雄的資質とは、「大半の人をやすやすとからめとる強大な状況の力に抵抗する能力」と言ってもいいだろう。

・刑務所に戻ってきそうな若い子や、刑務所の環境で人格形成されて惑わされたような、二度と社会復帰できない子たちのほうがずっと早く釈放される。刑務所は一大ビジネスだ。刑務所には囚人が必要だ。刑務所にやってきて、ちゃんと考えられる人間は、刑務所には戻ってこない。

・ひとりの人間が他の人間を支配するのは、非常に大きな責任を伴います。その責任は、教え、教育し、理解させる必要があるが、命令してはいけません。



ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

  • 作者: フィリップ・ジンバルドー
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2015/08/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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