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『RED ヒトラーのデザイン』 [☆☆]

・人間の目はもともと二重丸になっていて、西洋人はその外側が青だったり茶だったりする。真ん中の黒いところは瞳孔で、この黒は黒という色ではなく、その奥の空間の闇。

・現代美術の大きな特徴は、抽象化されてシンプルになったものをひたすら巨大に描くこと。それと、イメージを繰り返すこと。キャンベル・スープをひたすら並べた作品などで流行った手法だ。

・ナチス様式は今では、『スターウォーズ』の帝国軍など独裁体制をあらわすときの悪のイメージとして定着している。この様式に従えば、魅力ある悪の組織が簡単に描写できるからだ。

・グーテンベルクに端を発する印刷によって、読書の習慣が広まり、近くの文字がよく見えない人が現れ、眼鏡の需要が増した。それによって、レンズの開発も起こり、顕微鏡の発明につながっていく。

・ナチスのような全体主義は個人よりも全体を優位におく。個人は全体に虐げられるという意味では、個人は平等である。

・ヒトラーは、カトリック教会が祭事暦をつくって民衆の時間を管理したことを真似し、ナチスも政府の祭事暦をつくり、恒常的に政治宣伝に民衆をさらした。党大会もそのひとつ。

・ナチスは当初、農業従事者から支持を広げていった。しかし、戦争を前提にすると国の産業化・近代化は必須。農業を切り捨てざるをえない。

・「夜と霧」は、ヒトラーが愛したワグナーの歌劇の中の一節の引用で、ユダヤ人が夜の霧のように誰の目にも触れず、消えてなくなれ、という意味を込めているそうだ。つまり、行方不明作戦である。

・ナチスは、単なる悪の組織ではない。先進的な社会主義国といってもよいくらいの、労働者優遇大国だった。

・現在、世界を騒がしているポピュリズム――「威勢のいい政策を掲げて民草の感情に訴える、誰かを敵とみなして対話より対決を選ぶ」――の政治家たちの多くもヒトラーの大衆扇動術を研究しているのかもしれない。

・最良のプロパガンダは、昔も今も同じ。見えないようにやることだ。公衆に宣伝だとさとられぬように、社会全体に浸透することである。

・もともとギロチンは、身分を問わず同等な死を与えられる、身分差別のない処刑法としてフランスで開発されたもの。

・ヒトラーは、世の中には三種類の人間がいると主張した。文化の供給者と受給者、そして破壊者だ。これはナチズムの主人たるナチ党と、ナチズムを受け入れた国民、そしてナチズムの敵対者という意味である。

・ゾンダーコマンド(Sonderkommando)とは、ユダヤ人収容者の中から屈強なものを選び、搬送されてきたユダヤ人をガス室へ誘導、ことがすんだあとの死体処理、ガス室の清掃、死体の焼却、残された衣服の整理と貴金属収集など、汚れ仕事全般を請け負わされた特別労務班のこと。上着の背中にゾンダーコマンドであることを示す赤の×印が引かれた。

・1937年当時のアメリカでは、ヒトラーのことを、ドイツから共産党を駆逐した、共産主義と闘う英雄とみなしていた。

・モダニズム建築で問題となるのはシンプルゆえに避けれない即物性だ。「味気ない」という心の問題を解決できないところにある。

・顔のシャドーについて、シャドーの存在がクローズアップされたのはレオナルド・ダ・ヴィンチまで遡ることができる。レオナルドがはじめて斜線でシャドーを表現して以来のことだ。

・足をまっすぐに上げて進む、グース・ステップ(がちょうの行進)。ナチスの軍隊の行進スタイルだ。ナチスがグース・ステップを取り入れたことによって、グース・ステップは、全体主義、現旧共産主義国家の定番の行進スタイルとなった。

・「構え」「狙え」の号令のあと、伝令が将校に銃殺中止を伝えにきた。将校や「止め」と発したが、時すでに遅し、「撃て」と勘違いした兵士たちは引き金を引く。チャップリンは、この「構え」「狙え」「撃て」とくるような「リズム」こそ恐怖の本質ではないか、と言う。リズムは「個々の差異を消し去り、個人の意志を無にし、言葉や意味内容を無にし、否応なく人を従わせ、ついには人の命を奪う」。

・制服は犯罪を行なうのに最適の格好である。つまり個人が特定しにくくなる。責任の所在もあいまいになる。そのため、制服着用で、悪事も含めたいろいろなことをするハードルが下がる。

・1939年、劣った遺伝子とされた障害者に対する安楽死作戦「T4」がはじまった。「T4」とは安楽死管理局の所在地の住所がティーアガルテン(Tiergarten)四番地だったから。

・ストレス社会では差別することがストレス発散法となる。

・映画の中で、白人を助けて死んで行く都合のよい黒人のキャラクターのことを、「マジカル・ニグロ」と呼んでいた、という。

・あたかも公平であるかのように見せかけるために白人集団の中に入れられた少数の黒人のことをトークン・ニグロと言うらしい。

・捕虜の射殺は連合国でも行われ、戦争では勝者こそおのれの罪を隠せる。

・ナチスの特徴は、伝統的なものと新しいモダンなセンスとの混在にある。どちらかというと、新しさの中に少し古さが混じるくらい。

・2006年、アメリカ、カリフォルニアにある米海軍のコロナド水陸両用基地の兵舎を上空から見ると、ハーケンクロイツの形をしている、と話題になたことがある。

・ホロコーストを教えようにも、イスラム圏からきた生徒はそんなものなかった、と否定的だそうだ。今まさに、ユダヤ人の国であるイスラエルと対立しているからだ。

・人口の少ない国は、移民によって政権が変わることもありうる。選挙でイスラム政権になってしまったフランスを描いた『服従』(ミシェル・ウエルベック)という小説は衝撃的だった。

・いろいろなことをただ「知る」だけだったら、インターネットで十分。大事なのはその「文脈を知る」こと。そのために歴史が綴られる。



RED ヒトラーのデザイン

RED ヒトラーのデザイン

  • 作者: 松田行正
  • 出版社/メーカー: 左右社
  • 発売日: 2017/08/02
  • メディア: 単行本



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