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『戦争と経済の本質』 [☆☆]

・全世界では1兆7500億ドルの軍事費が支出されています。全世界のGDPは77.3兆ドルなので、GDPに占める軍事費の割合は、全世界を平均すると2.3%ということになります。

・過去20年間で、米国のGDPは2.4倍に、ドイツは1.8倍、ロシアは6.7倍、中国に至っては18.4倍に成長しました。同じ時期における日本のGDPはほぼ横ばいという状況です。

・1994年時点において、ドイツの軍事費は日本の8割程度しかありませんでしたが、現在では日本を上回る支出となっています。しかしドイツにおける軍事費のGDP比はむしろ以前より低下しています。この差は、順調に経済成長できた諸外国と経済に躓いた日本の差と考えてよいでしょう。

・職人芸的な技を過大評価し、システマティックな部分を軽視する、現状に対する批判を社会として受け入れられない、などの風潮は、今の日本にも時折見られるものです。こうしたムラ社会的な風潮は、他国との争いにおいて必ずマイナス要素となります。

・日本はパートナーシップの構築が下手。

・戦争というものが、経済活動の延長線上にあるのだとすると、経済的なパートナーシップをどう構築するのかは、国家戦略上、非常に重要な課題ということになります。

・ロシアは自国でクリミア戦争の戦費を調達できず、何と敵国である英国の金融街シティで調達せざるを得なかったのです。英国はあえて、自国市場をロシアに開放し、資金調達を支援しています。

・ロシアの資金調達を支援してしまうと、確かに目の前の戦争では不利になってしまうでしょう。しかし、長期的な国家の覇権を考えた場合、自国市場を閉じない方がよいとの判断を行なったのです。こんなところにも、英国が世界の支配者になれた理由を垣間見ることができます。

・中央銀行国債を直接引き受けるということは、戦費という形を通じて、市中に大量のマネーを供給するということにほかなりません。当然、通貨の価値は減少し、インフレが発生することになります。

・米国はサウジアラビアを抜いて今や世界最大の産油国です。米国は近い将来、すべてのエネルギーを自給できる見通しが立っており、中東の石油に頼る必要がなくなっています。

・歴史を今から眺めて見ると、国際連盟脱退前後から、米英との関係悪化は決定的だったように見えます。しかし、当時の日本人の意識はそうではなく、多くの人が、実際に戦争になる直前まで、米英からの不信感が極めて大きいことについて、あまり自覚していませんでした。

・国家のパワーバランスは基本的に経済活動で決まりますから、既存の交通インフラから切り離されている地域は、国家間のパワーバランスにおいても、隔離された状況に置かれることになります。

・シーパワーの国は、隣国とはとりあえず海で隔てられていますから、海を使って世界各国と貿易を行ない、富を増やすことの方に熱心となります。一方、ランドパワーの国は隣国と地続きですから、自国領土の保全を最優先に考えざるを得ません。このためどちらかというと閉鎖的になり、ビジネスには積極的ではありません。

・最も安い船舶に比べて航空機は15倍以上のコストがかかります。つまり、大量の物資を安定的、かつ安価に運ぶためには、今も海上交通というインフラに頼る必要があるわけです。

・自国のサービスをグローバルに展開できない国が情報戦において相対的に不利になってしまうのは、地政学の世界では常識です。

・日本人はとかく感情的に物事を理解しがちだからです。日本国内には、米国は無条件に日本の味方をしてくれると強く信じている人がいる一方、米国は横暴なだけで日本は常に被害者だとする見解も根強く残っています。

・世界の警察官のように振る舞うという米国の姿勢は、つい最近始まったことであり、米国の伝統ではないということを理解しておく必要があるでしょう。

・米国が覇権国家として振る舞うようになった理由の1つは中東の石油を確保するためだったのですが、エネルギーが自給できるようになったことで、潜在的にはその必要はなくなったのです。

・米国はもともと孤立主義の国でした。米国が戦争をしてまで、英国から独立したかったのは、欧州の問題と関わりたくなかったからです。

・辺野古の基地問題は、日本では、ややもすると米国の軍拡という文脈で捉えられがちですが、実体は逆です。沖縄から米軍が撤退するにあたり、既知を辺野古に集約するという方が実態に合っています。

・日本では、企業は株主のモノではなく、従業員のモノという風潮が強く、多くの人は、これは日本社会の伝統だと思っています。しかし、こうした考え方は、国家総動員体制によって強制的に作られたものであり、実は日本の伝統ではありません。

・総動員体制によって年功序列の賃金体系や終身雇用、下請け元請け制度などの導入が進みました。インフレが進む可能性が高くなってきたため、給料を政府がコントロールしないと国民が生活できなくなってしまうからです。

・日本は業種ではなく会社ごとに労働組合があるという珍しい形態となっており、これが中小企業の待遇が劣悪であることの原因の1つになっているのですが、この形態も実は国家総動員体制によって強制的に作られたのです。

・建前上の歴史では、言論弾圧を進める軍部と言論の自由を求めるマスメディアの争いという図式になりますが、現実の姿はだいぶ違っていたようです。紙の配給を優先して受けたいマスメディアが、軍の将校を連日連夜、女性のいる店に接待し、便宜を図ってもらっていました。

・ITの世界は、あらゆる分野において、抽象化、モジュール化が行なわれており、役割分担が徹底しています。このため、自由自在にシステムを拡張することができますし、1つのモジュールを複製して他に転用することで、極めて安価に別のシステムを構築することも可能となります。

・部隊の編成やオペレーションのあり方など、組織の運用についても、状況に合わせて柔軟に体制を変えるという方向に変わりつつあります。ITを使った情報収集や分析手法を駆使することで、中央集権的なオペレーションよりも、現場判断を重視したオペレーションの方が戦果を上げやすくなっているのです。

・戦争は補給や整備、衛生といった兵站業務があってはじめて成立します。

・故障した車両は自走することができません。結果的に大型トレーラーなどに乗せて道路を走ることになります。つまり、大量の車両を投入して戦闘を行なう場合には、よく整備された大型の幹線道路がないとうまく運用することができないのです。逆にいえば、こうしたインフラのない未開拓の地域に、現代的な軍隊は投入できません。

・米軍がイラクに大量に展開できたのは、イラクが比較的豊かな国であり、道路網や電気といったインフラが整っていたからです。

・米国の17歳から24歳の若者のうち、約7割が何らかの条件に抵触し、本人が入隊を志願したとしても、軍に入れない状態となっています。入隊できない理由として最も多いのが身体的、学力的な問題で、28%がこれに該当するそうです。最近、特に問題となっているのが、数学力と読解力です。

・米国では、大学院に行くための奨学金を目当てに入隊する低所得層出身の学生も多く、実はこうした優秀な人材が、装備のハイテク化を現場で支えてきた面があります。

・多くの軍事技術は、最先端を追求するのではなく、信頼性第一の保守的な考え方で体系立てられている。

・最終的に勝負を分けるのは、相互の行き来を相殺した結果として、相対的により多くの資金や情報を集めている国ということになるでしょう。

・戦争が外交の延長であり、外交は経済の延長であるというのは、使い古された言葉ではありますが、戦争の本質を最もよく表しているといってよいでしょう。

・太平洋戦争では場当たり的に物事に対処するということを繰り返すうちに、自覚のないまま周辺国すべてを敵に回してしまいました。

・最も利害が一致するパートナーであった米国からの満鉄共同経営プランを拒絶し、グローバルな金融システムに背を向けてしまいました。こうしたパートナーシップ感覚の欠如は今の時代も続いています。

・パートナーシップとは、相手に媚びて同じように振る舞うということではなく、相手に対して自らの立場や利害を明確に伝え、相手と交渉することで培われます。

・最近、日本では保守化傾向が強くなっているといわれ、やたらと日本の伝統や文化が強調される傾向が見られます。しかし本当の意味での伝統というのは、常に変化に対応し、生き残っていくことでしか維持することはできません。



「教養」として身につけておきたい 戦争と経済の本質

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  • 作者: 加谷 珪一
  • 出版社/メーカー: 総合法令出版
  • 発売日: 2016/06/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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