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『黒猫の薔薇あるいは時間飛行』 [☆☆]

・勘違いを突き進めて常識を覆すところに、研究の面白さがある。そうじゃないかね?

・植物はしゃべることができない。彼らは繁殖でさえも他人任せだ。風を頼り、虫を頼り、鳥を頼り、それでも静かに新天地を目指している。

・恋愛の楽しみって自分が誰かを好きになることだから。誰かに好かれるかどうかっていうのは確率でしかないし、そんなものは初めから私のなかでは恋愛の楽しみに含まれていないわ。

・答えというのはいつも至ってシンプルだということさ。シンプルじゃない解答はたいてい間違っている。

・「最終的には自分の頭で考えること」という家訓を作ったのは、他ならぬ彼女の祖父なのだ。

・庭は構成するものですが、園は解き放つものかな、と思うんですよ。

・しかも音の数はむしろ終わりに近づくほど少なくなってるんです。後半にいくほど聴き手の感情が高ぶってくるから音数は少なくても盛り上がるんだ。天才にしかできない思い切った技だよ。

・生まれながらに人間は音楽とそれ以外とを明確に分けているわけじゃない。それらがはっきり区別できるようになるのは、文化を習得する過程での意識のすり込みに過ぎないんだ。

・何度でも同じテクストに当たる。これが研究ではいちばん大切だ。

・若い学生は勘違いして、博覧強記であることが素晴らしいと思っている者が多い。もちろん、博覧強記を取り柄とするのも一つの策略ではある。だが、若い者の知識の量にはしょせん限度があるよ。それよりも、一つのものを深く掘り下げること。それが大事だ。

・何でもすぐ聞いて済まそうとするのってアホ学生のすることよ。

・先生、なぜモーツァルトはここで半音階を用いたんですか? なぜですか? 聞くたびにその子の愚かしさばかりが露呈されて、聞かれた教授は哀れむような顔をしていたわね。

・風土は人を作る。「天才」を意味する「ゲニウス」は、Genuinという土地の精霊を語源に持っている。

・18世紀の評論家デュボスは天才を一本の植物だと言った。何もしなくても生えてくるが、育つかどうかは後天的なものってこと。

・土地の精霊だと思った。彼らはサマセットの土地を愛し、つねにそこに暮らす人々のために自らの才能を使う術を知っていたのだ。

・彼らが語り合っているのを見たことはないね。いつもただ隣を並んで歩いていたっけ。まるで言葉なんて要らないみたいに。それほど二人のあいだには強い絆があった、ということだろうか。眺めている景色が同じだったから。

・同じ道でも行きよりも帰りのほうが早く感じるのは、その風景が身体に馴染んできた証拠なのだろう。

・時間というものは美にとって重要な概念なのはいうまでもない。たとえば、時間を経てこそ芳醇なワインはできるし、骨董品とは時間そのものが価値の契機と大きく結びついている。

・カビがセルロースを分解するのに対して、キノコはリグニンを分解します。とくにリグニンを分解できるのはキノコだけなので、植物界にとっても動物界にとってもキノコはとりわけ重要な存在なのです。

・人生は魂の片割れを探す旅でもある。その片割れは人間かもしれないし、犬かもしれない。一冊の書物の可能性もあるだろう。人はその魂の片割れを探す。

・何も失わずに生きるには人生は長すぎるし失うものに頓着しなくなるにはあまりに短い。

・僕の好きなミステリに、家族に起こった悲劇の時刻で時計を止めている家の話があった。

・養母は、養父を疑わない人だったの。でもいまになればわかるけど、あれは疑っていなかったんじゃなくて、疑うのが怖かったのね、きっと。人にはそれぞれのキャパシティがある。

・自分が人間だからって、人間にしか恋愛感情をもってはいけないなんてことはない。それが動物であれ石であれ、ひとつのものに心惹かれると、そこに通常の分類法では割り切れないそのものにしかない魅力を感じるものだ。そして、人はそういうものを恋と呼ぶ。

・結婚のような社会的制度になるといろいろあるだろうが、恋愛のレベルでどうして対象を人間同士に限定しなければならないんだろう?



黒猫の薔薇あるいは時間飛行

黒猫の薔薇あるいは時間飛行

  • 作者: 森 晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本



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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • メディア: Kindle版



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