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『黒い手帖』 [☆☆]

・作者にとっては、頂上の専門読者に勝てば満足なのである。このへんから、日本の推理小説は一種の同人誌的な狭い小説になってしまったようである。

・一般に、犯罪は、金銭の上のこと、愛欲、復讐、自己防衛といった動機から起こることが多いと思われます。

・殺人の動機は、なにも遺産争いや、愛欲や、宝探しや、保険金搾取に限ったことではあるまい。いわゆる劣等感の殺人という動機も考えられる。

・役所仕事というものはたいそう面倒なものだが、埋葬許可証を貰う段になると、いとも簡単に手続きが済む。すなわち、医者から死亡診断書を書いてもらい、これを区役所の窓内に届けると、すぐ埋葬許可証がもらえる。この間、係員は死亡診断書を発行した医者に問い合わせるでもない。

・変わった型といっても、そこには普遍性がなければならないと思う。狂人であってはいけないのだ。たとえ異常な性格をもっていても、その性格は誰もが納得するもの、つまり、普通人の心の奥にもある気づかない心理でなければならない。

・加害者が宗教のために行為していると信じ込んでいる以上、そこには罪の意識はなく、したがって犯した罪を恐怖することがない。

・法医学の知識を持っている医者は少ないのだ。そのため普通の病死なり、事故死として葬られる殺人が、世間にはかなり多いのではあるまいか。

・松川事件の被告団を包む擁護運動が過熱的であったということを指摘するのはやさしい。しかし、その人たちがどれほど事件や裁判内容を熟知していたであろうか。

・加害者の企みも見せ、被害者の危機も見せるスリラー映画は安心である。そこには思考の負担が少なくなり、行動だけでスリルを描くことができる。

・五万分の一の地図がある。旅行のできない場合、そしてその土地をどうしても小説に書く上に知っておかねばならない場合は、これは手軽な作戦図である。五万分の一だと、大抵、郵便局、小学校、鎮守の社、警察署などは出ている。

・普通「古典」と言えば、西洋19世紀以前の書物をあげるか、日本では江戸期以前の本を指摘するのが多いようである。

・サマセット・モームが、「将来の用に供するつもりの材料倉庫」と自ら名付けた『作家の手帖』に近いが、それとも異なるのは、その内容がきわめて簡潔である点である。



黒い手帖 (中公文庫)

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  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/04/25
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